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未来は、ここからはじまる。

広島工業大学

SDGs PROJECT

水中ロボット開発で、地球環境に貢献。広島工業大学は、国連が2015年にSDGsを採択する前から「持続可能な社会の実現」という視点に立ち、様々な研究を行ってきました。中でも水中ロボットの研究では学生たち自身が研究計画を大学にプレゼンし、開発が進められています。水中ロボットは装備次第で、海洋ゴミの回収、海底での生物観測、大量発生したクラゲの駆除などさまざまな役割を果たすことが可能。海洋保全に向けて新たな一歩を踏み出しています。

学生の情熱をサポート。広島工業大学が大切にしているのは、学生たち自身が挑戦すること。そのため主体的な研究を促すべく、学生たちが取り組みたいテーマをプレゼンし、大学が活動費を支給するHITチャレンジ制度を整えています。個人の興味や情熱を出発点に、まわりを巻き込みながら研究を広げる経験を通じて、未来に向けて「持続可能な地球をつくる」人材を育成したいと考えているのです。

ABOUT INSTITUTE

建学の精神「教育は愛なり」と教育方針「常に神と共に歩み社会に奉仕する」という2つの教育理念を掲げる広島工業大学。工学部・情報学部・環境学部・生命学部の4学部で、学生主体の教育を行っています。1993年に全国初の環境学部を設置するなど、持続可能な社会の実現に早くから取り組んできたのも特徴です。

INTERVIEW

学びの力を、人のために。環境のために。
広島工業大学が目指す地球貢献とは。

2015年にSDGsが策定されるよりもずっと以前から、環境に重きを置いた大学運営を行っていた広島工業大学。
学長の長坂康史さんが考える「SDGs推進における大学が担う使命」と、学生たちの興味に基づいた自主的な活動についてお話を伺いました。

広島工業大学が、SDGsに取り組む意義とは。SDGsや、ミレニアム開発目標が策定されるよりも以前から環境問題に取り組まれているのはなぜですか?長坂学長:もともと環境を強く意識した大学運営を行っており、学生たちにも「自然や環境に対する畏敬の念を持って欲しい」という本学の理念を伝えています。1993年、先駆けて環境学部を開設し、2006年には「広島工業大学環境憲章」を制定しました。2020年には「SDGs推進センター」を設置して、学生のサポートを含め全学的にSDGsを推し進めています。
また、学生の自主企画に大学が活動資金の面でも支援する「HITチャレンジ」という制度があるのですが、企画の「SDGs貢献度」も採択の基準のひとつです。
技術先行の社会において、私たち大人は経済を発展させるために環境を無視して走ってきてしまった。見つめ直す時期にさしかかった今、技術系の大学としてSDGsに取り組むことに大きな意義があると考えています。

ものづくりへの思いを、環境を守るための活動へ。HITチャレンジで水中ロボットを開発してコンテストに出場する企画が採用されたそうですが、開発の意義を教えてください。横田さん:今、漁業者やダイバーの減少が深刻化しています。その問題意識を発端として、僕たちのチームでは水中で作業を行う自律型ロボットの開発を行っています。養殖作業やクラゲの駆除、珊瑚の白化現象の観測や水中建造物の点検などをダイバーに代わってロボットが行えば、少人数でも水産業を継続したり、海の環境保全を続けることができます。

尾田さん:授業で海洋ゴミ、特にプラスチックが増えていることを知って、課題意識を持ちました。HITチャレンジ以外にも、個人としてペットボトルなどのゴミを回収する水上ロボットを研究しています。
横田さん:チームメンバーの共通点はものづくりが好きなことと「海を守ろう」という目的意識。尾田君をはじめとして、多くの仲間と協力しながら取り組んでいます。

GREEN Projectの企画もHITチャレンジで採択されたのですね。立岩さん:地元の方の協力を得て、2011年頃から山の植林や土壌の調査と森林保全活動を行っています。また、環境保護を発展させるためには啓発が必須です。コロナ以前は、子どもたちを山に招き入れて自然と触れ合う機会をつくる「子ども教室」も継続的に開催していました。
私たちの活動は、気候変動によって近年多発している土砂災害とも関わりがあります。山林を継続して観察していれば、地域の環境の異変をいち早く察知できるかもしれません。必要な際に自治体などにデータを提供できるよう、後輩たちにも引き継いで、長く活動をつなげていきたいです。

若い力が、未来を変えていく。今後、学生のみなさんに期待することを教えてください。長坂学長:実は、HITチャレンジの企画段階では「チーム力や企画力が足りない」と感じることが多々あります。しかし、活動報告会では、困難を乗り越え大きく成長を遂げた学生たちの姿に毎年驚かされます。
大学としては、SDGsに直接取り組むだけではなく、SDGsの意識を備えた“人”を育てる役割を担っていると考えます。SDGsのゴールは2030年に設定されていますが、環境課題に終わりはありません。2030年以降の未来においても、自らの技術を活用する際には、必ず「持続可能な地球をつくる」ことを意識して実行する。本学で学ぶ学生たちには、そんな社会人に育ってほしいと願っています。

みなさんの今後の活動への思いは?横田さん:知識や技術は大切ですが、それだけでは足りないことに気付きました。コミュニケーションを大切にして、多くの方の協力を得ることが力になると感じています。大学での経験を生かして、これからも「初めての出来事」にひるまず、楽しんでチャレンジを続けたいです。
尾田さん:大学で海洋ゴミを知って、「自分ができることはなにか」と考えた結果、ゴミ回収の水上ロボットを思いつきました。私と同じように、多くの人に海の実情を知ってもらい、まず「むやみにゴミを捨てない」ことを意識してもらうためにも、活動を広めていきたいです。
立岩さん:大学以外の方々と関わるHITチャレンジでの経験は、社会に出る前の“予習”になっていると感じています。もっと色々な人と出会い、多様な価値観を知り、周囲を巻き込む力を身に付けて、大好きな自然を守る方法を模索していきたいです。
2021.10.8 インタビュー実施 / 
Photos:西森哲 Words:菅原りさ

PROFILE

  • 広島工業大学第9代学長長坂康史さん1966年生まれ。専門は情報学(ネットワーク、ソフトウェア)・素粒子物理学。「失敗も含めて多くの経験を積んで欲しい」との思いから、学生たちの様々なチャレンジをバックアップ。

  • 工学部知能機械工学科4年/
    HIT-Robotics代表
    横田弘之さん高校3年生のときに、父がSDGsのピンバッジをつけていたことがきっかけでSDGsを知る。大学2年次に授業を通じて本格的な興味を抱き、SDGs達成に向けて行動しようと決意。海の環境にとどまらず、様々な分野での社会貢献に意欲的。

  • 工学部知能機械工学科4年/
    HIT-Robotics副代表
    尾田俊祐さん子どもの頃から家庭や学校で「ポイ捨てはいけない」と言われてきたのに、ポイ捨てが一因で海洋ゴミが増えていると知り、ロボット開発に着手。今後の目標は海洋ゴミの問題を自ら発信すること。

  • 環境学部地球環境学科3年/
    GREEN Project代表
    立岩宏都さん高校生の頃から自然環境の中を散策するのが好きで、環境学部へ進学。大学のみならず、山を通じて地域の方と関わることが楽しみのひとつ。「子ども教室」では、一緒に参加する保護者への啓発も大切にしている。